今日では土木工事・建設工事や解体工事で、規模の大小に拘らず、工事による損傷の有無を確認する為、工事の前・後に近隣家屋等の調査をする事が慣例となって来ましたが、その背景にはいわゆる工事公害を巡る建設側と住民側の紛争の歴史があります。
半世紀程前の1980年、建設省(当時)発注の品川共同溝工事に於いて「工事前と工事後に、沿道家屋の調査をして報告書を提出する事」との指示がありました。しかし調査方法や報告書の具体的な仕様がなく施工会社が困惑していた時、私の勤務先の社長が引き受けてきて「お前がなんとかしろ」と一任されました。
調査の目的を熟考する中で編み出した方法で調査しその報告書が承認されました。これが以来建設省仕様となり今日の近隣家屋調査の原形となりました。
それからが大変でした。調査依頼が殺到したのです。
大型土木工事から始まり、大型建設工事へ、公共工事から民間工事と急速に広がり十数年で中小の土木・建設工事や解体工事にまで必要不可欠となり、増大する一方の需要に対し、次々と調査技能者を育成しながらの休みのない調査づけの毎日でしたが一社のグループではとても対応できません。必然的に他業界からの怒涛のような参入のお陰で、現在では需給の折合がとれる所まで来ました。
しかし現実は、急増する需要に対し「公正な理念と優れた調査能力」を兼備した本来の調査技能者の育成が追いつかず、業界は玉石混交の状態です。未熟な調査人による稚拙な調査報告書は、施工者側にも住民側にも不利益と不信をもたらし、紛争となるケースが増加しています。
今や全ての建設工事に不可欠な存在となった近隣家屋調査業務を改革確立する近道は、公的指導と公的資格制度であり長年待ち望んできましたが、未だに何の兆しもありません。私もそろそろ引退すべき年齢となりましたが、最初に近隣家屋調査業務を手がけた者として業界でこれ迄生かしていただいた御礼と最後の御奉仕として、公的機関実現への先導として本協会を立ち上げ微力を捧げる所存です。
関係各位のご指導とご助力を、お願い申し上げます。

一般社団法人 近隣家屋調査士認定協会
代表理事 小坂 秀徳

